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2012年8月1日水曜日

招き猫の御届印



 日清戦争錦絵にズームツールを装備しながら記事やデータを確認・見直ししている。その中で面白い版元を発見したのでご紹介しよう。
 日本橋区小傅馬町三丁目十一番地の版元 長谷川園吉は御届印を招き猫の枠の中に書き込んでいる。日清戦争錦絵にとりあげている長谷川園吉出版のすべての作品がその形式になっている。
 左図がその実際であるが、上から順に
となっている。
 ウェブ上で版元長谷川園吉を探した所、江戸東京博物館所蔵の「東京名所上野山下ステション開業式気車発車之図」がまず見つかった。明治21年1月の発行であるが普通に四角に囲んであるだけである。
 ただし、このにぎやかな絵のタイトルを囲んだ図柄は蒸気機関車の動輪であり、紅白の旗と提灯で埋め尽くされた景色を右上で文鎮のようにしっかりと押さえつけている。この画はそうやって押さえつけていなければ、その文鎮の隣で花火とともに空中に舞い上がっている、魚やだるま、金魚、ねこ、こうもり傘、日の丸の旗、そして、紳士などと一緒に画面全体が、はじけてしまいそうな騒がしい絵なのである。長谷川園吉のプランかどうかは定かではないが、少なくとも、こういう仕掛けを嫌いな版元ではなかったようだ。面白い画なので是非一度ご覧下さい。
 他に野田市立図書館所蔵の「b04 朝鮮京城 大鳥公使大院君ヲ護衛ス」(楊斎延一画、明治27年刊)はやはり招き猫型である。
 日清戦争開戦で錦絵のブームが再来し、よしとばかりに、制作し、売りまくった版元の気合いと、デザイン感覚、洒落っ気が合わさってこんな印になったのだろう。